「KABUKIの城」SPECIAL対談
珠姫役吉井怜×作・演出久保田誠二×衣裳ディレクター河合由朗

吉井怜(中)
TV、映画、舞台と、女優として多方面で確かな演技力を披露している。

久保田誠二(左)
広告代理店博報堂を経て、ムービー、舞台などで活躍するクリエイター。

河合由朗(右)
新進気鋭の着物デザイナー。銀座「くのや」とコラボし、「り庵」ブランドを展開。



■ 舞台の楽しさ   

久保田 劇団キリン食堂は「笑い×アクション×ストーリー」をコンセプトに、これまで殺陣、コメディ、ダンスの融合した作品を送り出してきました。今回の「KABUKIの城」で主役・珠姫を演じる吉井さんはテレビ、映画でも活躍されていますが、舞台についてはどのように考えていらっしゃいますか

吉井 舞台は稽古を積み重ねるものですから、お客様に見せる前にいろんな事に挑戦できますね。同じ芝居でも試行錯誤を積み重ねてより出来上がったものになっていく。それに舞台は本番約2時間のあいだ気持ちをつなげて持っていけるので、入り込みやすいですね。失敗するという怖さはありますけど、みんなが一緒になって作り上げる舞台は助け合うこともできます。始まる前のドキドキ感は最高に強いですが、始まってしまえば走っていけるのでとても楽しいです。

久保田 これまで特に印象に残っている舞台はありますか?

吉井 「志村魂2」では、自分のセリフでわあっとお客さんが笑うのが本当に気持ち良くて。ACファクトリーさんではアクションをやらせていただきました。私はアクションが得意じゃないんですけど、自分がよりかっこ良く見えるように教えてもらってとても楽しかったです。

久保田 今回の作品は悲劇なのですが、台本を読んでいかがですか。

吉井 珠姫はとても強い女性だな、というのを感じました。でもいろいろ悲劇がありすぎて、敵役なんかはひねりつぶしてやりたいくらいです(笑)。

久保田 珠姫の強さは作品に込めた思いの一つです。僕はシェイクスピアが好きなんですが、重層的に折り重なった人間関係の中で、人間が持つ善意と悪意の二面性が積み重なり最終的には大きな悲劇になっていく。人間が生まれて死ぬ事の絶望と希望。そんなことが描ければと思います。悲劇ではあるんですが同時にエンターテイメントでもあります。今回の作品は箏奏者の中井智弥さん、作曲家・大塚茜さんの音楽ユニット「沙羅双樹」に、琴をベースにした素晴らしい音楽を作っていただきました。アクションは座長・新井剣史によるJAE(ジャパンアクションエンタープライズ)の本格的な殺陣、ダンスの振り付けは海外でもご活躍されている結樺レイナさんにお願いしています。

■ 衣裳と意匠   

久保田 「KABUKIの城」の舞台は戦国時代ですから衣裳の要素も重要ということで、着物デザイナーの河合さんと今回コラボレーションします。

河合 この時代の着物で今に残っているものを見ると、非常に力強い躍動感のある色使いで、華美なものが多い。というのは、戦国時代というのは生きるか死ぬか毎日わからない、それを背負っている人が着るものだからです。

吉井 着ているもの自体で活力を与えられるような感じですね。

河合 今回吉井さんの演じられる珠姫には、お姫様らしい着物をと考えています。悲劇的な人生を歩む珠姫ですが、反面華やかな、女性ならではの力強さを凝縮させたコーディネートにしていきたいと思います。

久保田 今でも着物というのはステイタスですが、当時は今以上に裕福さなどの表現ツールであったと。

河合 基本的に娯楽がないんです。そのうち南蛮貿易で外国のものが入ってきて、そして歌舞伎がわあーっと盛り上がった。能が武家に守られた一方、歌舞伎は町衆に守られて発達してきたんです。

■ 変わらないもの   

河合 「くのや」というのはそんな時代の変遷を経て、江戸時代末期の天保年間に創業されました。江戸時代は華美禁止だったので、綿・麻などしか着ちゃいけない、派手な箔使いも駄目。だから江戸時代に四十八茶百鼠といわれる渋い色が確立したんです。そうして完成されたものを、くのやは170年間伝えてきました。はやりすたりではなく、変えなきゃいけない事と変えてはいけないものを区別して存在させていく、そういうお店なんです。

久保田 そんな中で、「り庵」ブランドが立ち上がったと。

河合 くのやファンだと言ってくださる方には八十代の方もいらっしゃいます。新橋の芸者衆、歌舞伎の役者さんにもごひいきにしていただいている。ここは変えちゃいけないところなんです。ただこれから、僕ら四十〜二十代の方にももっと和物の良さを伝えていかなきゃいけない。くのやのお茶室に端を発した「り庵」というブランドで、現代の要素を取り入れた新しい和のスタンダードを発信していこうということです。

久保田 劇団キリン食堂も「り庵」と一緒に大きくなっていきたいですね。吉井さんはこれからこんな女優になりたいというのはありますか?

吉井 幅広い役が演じられる女優になりたいと思っています。見た人が「吉井怜だ」と思うのではなく、たとえば「あ、珠姫だ」みたいに、役名で思われるぐらいになりたいですね。役に入りこんで、その人物になりきってしまうというか・・・。反面、個性のある役者にもなりたいという思いもあるんです。阿部サダヲさんとか小日向文世さんとか、なにをしだすかわからない。同じセリフでも「そう来たか!」と思わせるような。今はいろんな事を吸収したい。日々が勉強です。

久保田 お客様が感動して楽しんでいただける舞台を作るべく、一緒に頑張っていきましょう。



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